知熱灸(ちねつきゅう):作り手の調子がバレる侮れないやつ。

知熱灸 東洋医学の世界を知ろう
燃えている知熱灸

コロンとした丸みを帯びた形、1cm程の存在感のある大きさ、並べると何とも可愛らしい印象をもつ知熱灸(ちねつきゅう)ですが、非常に万能で当院でも良く用いる灸です。

背中や肩こりなど固まっている箇所を緩めて流してくれたり、ちょっと面白い使い方では捻挫の早期回復にも役立ちます。捻挫は急性期に強い熱が発生しますが、その熱に更に地熱灸の熱を加えると一気に発散→熱が飛ぶから次は冷えて、結果、腫れや痛みが軽減する→損傷した組織の修復が早まるといった具合です。加減を間違えると悪化するので見極めが肝心ですが、灸ならではの使い方だと思います。

知熱灸のもと

この便利な知熱灸ですが、この形では売っていません。写真右側が形作る前の粗いもぐさです。左側が愛情をたっぷり込めた(笑)完成形の知熱灸です。

知熱灸に使う「もぐさ」は、ヨモギを精製して作られる「もぐさ」の種類の中でも粗目のものを使い、両手の指先で小さなおにぎり🍙を作るように圧縮しながら好みの大きさ、硬さにしていきます。
食べるおにぎり🍙同様に作り手の個性が出ますが、皮膚の上で燃やすことが前提なので、個々で熱さや燃焼時間がバラバラでは狙った効果がでません。ですから、なるべく均等になるように気をつけます。

ちなみに、この[粗目のもぐさ]、種類等級が同じでもメーカーごとに香りや手触りが違い、一番差が出ることは「虫に喰われるか否か」なんです。衣類に付く繊維を食べる小さな黒っぽい虫がいますよね。あれがこの[粗目もぐさ]も好物らしく、ちょっと油断して容器を開封しておくと知らぬ間に入り込んでします。でも、中には虫が付かない[粗もぐさ]があって何が違うのか見た目では分からないのですが、個人的な感想では香りが全然違います。虫が付く[粗もぐさ]ほど、とても新鮮で良い香りがします。「虫に食べられている野菜は安全」と聞いたことはありますが、[粗もぐさ]も同じようなものなのかなぁ?と勝手に納得したりしています。
あ、作った知熱灸に虫は入っていませんから安心してくださいね。
衣類用の防虫剤を一緒の容器に入れると虫は寄ってきませんし、作る直前には空気と共に『ふわッふわッ』になるまで激しくシャッフルして、万が一、虫が混入していても直ぐに見つけて取り除いてしまうので☺

知熱灸複数

こうして丁寧に作った知熱灸ですが、時間が経つと空気を含んで柔らかく崩れやすくなるので大量に作り置きが出来ず、毎回チマチマ作っています。周りからすると地味な作業をしているな~、と見えるでしょうが本人は真剣に愛情込めて作業しているので、見かけた方は優しく見守ってください。

ひよこのおじぎ

そして最初に「侮れないやつ」と書きましたが、この作業、手が湿っぽかったり、力が入りずらかったり、集中しずらかったりすると、知熱灸の表面が毛羽立ったり、いびつになったり、燃え方がおかしかったりします。
作り手も人間ですから日々体調は違います。どうしても納得できない仕上がりの時もあり、そんな灸を患者様に使えるはずもなく落ち込むこともあります。
こんな小さな灸を1つ作るのに体調の良し悪しが反映されるなんて、私の中では「侮れないやつ」なんです。

知熱灸